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「おはよぉ。随分と寝てたね」
「痛ッ」
私は起き上がろうとして腹を押さえる。なんで、腹なんだろ。
「久しぶり」
「何でお前がここにいるんだよ、森下」
倒れている私の目の前に居るのは行方不明のはずの森下だった。
「いちゃ悪い?」
「……別に」
いつキャラ変わった?前より遥かに態度がでかい。
「感謝してね、私が助けてなかったら出血多量で死んでたわよ」
「何で私が出血多量なん……」
森下が私の腹を指差したのでまず触れてびっくり。ぐっしょりと濡れていて言葉を失った。汗、いや、汗は決して赤くない。私の手についたのは私の血だった。
「原田さんは裏切られたんだよ。横内花梨と谷沢恵美に」
「花梨と、谷沢?」
にやりと森下が笑った。辺りを見る。倒れた佑介、多分死んでる。壁にもたれかかる花梨。谷沢は私のすぐ横にいた。
「吉田佑介は死んだわ、谷沢恵美は私が殺した。方法は企業秘密ね」
森下は口に人差し指を当てる。谷沢なんて別に興味ないけど。
「私が寝てる間に何があった」
「私の見たことでよければ、話してあげるね。そろそろ結果がつく頃だろうと思ってちょこちょこ三人を見てた。そしたら屋上に原田さんが横内花梨とやってきた」
例によって私は見えてないわけだから隣でお話を聞いていても全く問題がない。
「で、吉田佑介が横内花梨を殴ろうとしたら、逆に殴られ睡眠薬で死亡。ここまでは原田さんも知ってるよね」
原田さんは黙って頷く。
「その後は――」
横内花梨が狂ったような高笑いをした後、原田千春は倒れた。刺されたのだ、もともと屋上にいた谷沢恵美に。
私は一瞬では何が起きたか分からなかった。
「ありがとう恵美」
谷沢恵美は黙り込んでいる。
「恵美と私は仲間だもんね」
横内花梨が谷沢恵美に同意を求めた。言い方は、強制的だけど。
「……うん」
「裏切らないよね」
「うん」
ああそうか、谷沢恵美は気が弱いから横内花梨に無理矢理協力するように言われたんだ。横内花梨は初めから自分一人だけ生き残ろうとしていた。
でもね、そんなこと私が許さない。私は、頭のいいやつが嫌いだ。正確には、ずるいやつ、人を利用して生きる汚いやつ。利用価値がなくなるとそうやって切り捨てるのか。
私も……。
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