304人が本棚に入れています
本棚に追加
「よき理解者になった千春にいいもの見せてあげる」
いきなり呼び捨て。それに私がいつ森下の理解者になったんだよ。花梨に殺されて死ぬはずだったけど森下に“生かされてる”。余計な口を出して死ぬよりはおとなしく従ったほうがいいのかもしれない。
噂だと、端本が狂ったのは森下の祟りだか呪いらしいし。
「人が見ていると緊張するわ」
全然緊張してないくせに森下がつぶやく。手には短剣があった。
「そんなもので殺せるの」
「千春は本当に馬鹿。こんなものでも頸動脈に触れちゃえば人間なんて簡単に死ぬ」
普通に恐いことを言うなと、森下に言ってやりたい。
「私には別の使い方があるんだけどね」
森下は花梨の傍に座りこむと花梨の頬をひっぱたく。
「ちょっと」
「起きなよ横内花梨」
「……」
花梨が頬を抑えながら瞼を開いた。
「これが何だか分かる?」
起き上がろうとする花梨を左腕で抑えつけて右腕で短剣を振り上げる。
「こ、殺さないで。謝るから、謝るから助けて」
「もう謝らなくていいよ」
森下は微笑むと花梨をふわりと抱き締める。
「ありがとう」
「許す気ないし、じゃあね」
花梨の頭には森下の短剣が刺さっていた。しばらくしてから短剣が血とともに抜かれる。
「さて、どうなるか」
にやにやしながら私の隣にやってきて座る。
「へ?」
刺されて重傷の筈なのに花梨はゆっくりと立ち上がった。そして、目を見開きながら屋上を走り去った。
「明日が楽しみね」
「明日?」
「だって、もう夕方」
「はあ!?」
腕時計を見るともう五時近かった。午後の授業でてないや。あんなつまんない授業、別にでなくてもいいが。
「一度にたくさん頑張ったから疲れちゃった」
森下は伸びをしながら欠伸をする。手から短剣は消えていた。
「また何かあったら来るから、よろしくね千春」
……気が付くと森下は消えていた。屋上には二つの死体と今だに訳の分からない私がいるだけだった。
次の日、第一理科室で硫酸をたくさんかぶった横内花梨、屋上で睡眠薬を投与した吉田佑介、鋭利な刃物で刺された谷沢恵美、三人の死体が発見された。
端本と担任が死んだばっかりだったし、この事件はこの学校にさらなる恐怖を招いた。
最初のコメントを投稿しよう!