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「でも陽子ぉ」
雨宮は古宮にしがみついてしょげる。キモい。
「時定は?」
千春が携帯電話の画面を見ながら男子に話し掛ける。時間を見ているのかしら?
「誘ったの柳沢だろ。ちゃんとメールしたのか?」
「知らない。連絡入れたしあいつが遅刻しているだけじゃないか?」
「時定ならやりかねないな。葉桐に言ってなかったけど俺と柳沢はあいつに三十分以上の遅刻をくらった経験アリ」
「うわっ、矢崎と柳沢お気の毒」
雨宮は口に手を当てていかにも男子を憐れむか弱い女子、を演じている。ああいう女って何で存在してるの?
「遅くなってごめん!」
「お前、俺達をどんだけ待たせ……あれ?」
矢崎が間抜けな声を上げる。
「誰だ」
葉桐は声のする方向を睨む。電灯の光がそいつの顔を照らした。
「山岸くんか」
古宮が声をかけると葉桐は睨みを止めた。
「こんばんは」
「あれ、誰?」
私は千春に近づいて話し掛ける。
「山岸誠司」
そんなのいたっけ?
「時定くんが来れなくなったらしいから、代わりに僕がきたんだ、迷惑だった?」
「え!?」
「山岸くーん、どこ見て喋ってるのぉ」
雨宮が山岸の目の前で手を上下に振る。
「原田ならそこにいるじゃん、誰と話してるんだよ」
柳沢が笑いながら言うけど、私は笑えない。
「う~ん……空気」
「やだぁ、おーもしろーいー」
「ごめん原田さん、暗くてよく見えなかった」
「大丈夫だけど」
違う。山岸は、私が見えてる?
「相当、目が悪いらしいね」
千春さん。なんで、そうなるの。
「お馬鹿、違うでしょう。山岸は私が見えているかもしれない」
「へぇ」
へぇ、じゃないわよ大馬鹿。横内花梨を生かしたほうがまだ使えた!ああもう私も馬鹿かもしれない。
「本当に大丈夫なの?セキリュティって結構しっかりしてるのよ」
古宮が千春に問い掛ける。千春に答えられるはずがないわ。
「大丈夫だよ。セキリュティランプ点灯してないし、故障してるんじゃない?」
山岸が校門の近くになる赤いランプが点灯していないことに気付く。ああ、あんなものがあったのね。よく見てなかったわ。
「頭いいねぇ山岸くん」
「雨宮に言われても嬉しくないって」
「矢崎真くんに同感いたしますー。葉桐は?」
柳沢と矢崎は気が合うみたいね。
「どうでもいいから早く行こうぜ」
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