選抜

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     私が促すと皆が頷き校門に飛び越えていく。森下は門を擦り抜けていた。 「スカートじゃなくて良かった。陽子にメールして正解ね」 「こらこら、人に頼るな」 「お前わざわざ制服で来たの?」  ジーンズについた鎖を鳴らして、葉桐が言う。山岸くんがぴっちりと制服を着た学生だから。 「一応、登校ってことだし」 「えらい、えらい」  山岸の頭を撫でる柳沢は酔っ払いの様。 「うわぁ、身長の差が悔しいなぁ」 「柳沢はデカすぎなんだよ」 「矢崎も大して変わらないだろ」  どうでもいいから校内に入ってよ。森下が般若のような顔で皆を睨んでいるのを見て私は急いで声を上げる。 「ほら、早く入るよ」  それを聞くと森下は私を見てにやりと笑う。さながらよくできましたって感じ。 「でもさー鍵かかって、あ、開いてるし」  矢崎が駄目押しでドアに触れるとドアは簡単に開いた。 「準備万端に決まってるじゃない」  森下に抜かりはないらしい。そこまでしないで早く殺りゃいいのに。森下って分かんねー。 「準備いいじゃん」  葉桐は私の方を見て笑う。……頬の赤らみが森下にバレませんように。 「ねぇ、皆で校内を回るの?それって意味ないんじゃない」  暗い昇降口で上履きに履き替えながら古宮が言う。 「古宮に同意、男女のペアで探索しよーぜ」  柳沢が同意するけど、目的は違うみたい、馬鹿だ。 「それだと、男子一人あぶれるよ。あ、柳沢がハブでいいか、私は山岸くんと一緒に回るもん」 「三人ペアが一つと、二人ペアを一つつくればいいんじゃない」  雨宮に腕を捕まれて山岸は慌てて答える。シャイ? 「それでいいと思う。ペアはアミダで決めよう」  私が言うと古宮が後から付け足す。 「千春が言った案だと書くものが必要だね。誰か持ってる?」  急に全員が黙る。 「どこかのクラスの黒板を使おうか」  校内は思ったよりも暗く、自分の肌の色も分からないくらい黒しかなかった。山岸が辛うじて懐中電灯を持ってきたから、黒板にアミダを書くことができた。 「山岸くん準備いいね」  古宮がチョークをサンに置いた。
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