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「山岸さぁ、気を効かせて懐中電灯は人数分持ってくるべきだったよな」
「しょうがないでしょう、気付かなかった私達が悪いんだし、山岸くんがそんなに懐中電灯持っているわけないじゃない」
何でよりによってこいつなんかと。私は自分の心の中で深く溜め息をつく。
矢崎や葉桐のほうが幾分かまともなはず。どうして柳沢とペアを組まなくちゃいけないのよ。恨むとしたら自分の運とここに来てしまった好奇心なんだろうけど。
柳沢の言うとおり懐中電灯は欲しい。やっと目が慣れてきたといえ、自分の肌の色が分からないほど辺りは暗い。民家がぽつぽつとあるくらいで私の学校の周りは何もない。
辛うじて月の光が私の周りと廊下の少し先を照らしている。
「どこから行く?」
「今、私達がいるのって一階でしょう。図書室からでいいんじゃない」
私達がいる生徒棟は教室なんかが主にある。
特別棟は職員室とかあとは分野によっては使ったり使わなかったりする。例えば物理と地学とか……教室がまとまっている。生徒資料室、通称図書室は特別棟にある。
「わざわざ特別棟に行くのって面倒臭くないか?」
「最終目標が屋上の階段なんだから下から行ったほうがいいに決まってるじゃない。それとも上へ下へ行ったり来たりする?」
まとめると、柳沢は黙り込んだ。
「女子トイレ以外は余裕そうだよな。図書室と階段のおばけなんてあまり聞かないし」
「分からないわよ、図書室は呪いの本とか。階段は、一段増えているとか」
死体のせいで一段増えていた、ってね。残念ながらこの学校では過去に死亡事故は起きていない、自殺も。ああ、それはつい最近に破られたけど。
端本くんの無差別殺人、花梨と佑介と恵美の、いがみからと思われる殺し合い。ここ最近で周りの環境は大きく変わっている。それに気付けている人は多分、あまりいない。
「急に黙りこむなよ。もしかして恐くなった?」
こいつはまず無理。皆、気付くより先に恐いなぁ、とか自分は死にたくない、とか思っているはず。
「おーい、無視かぁ?」
「柳沢のほうが恐がっているんじゃない?」
「ば、馬鹿言うなよ」
図星。葉桐、山岸くん辺りなら話が分かりそう。後、千春。前はただのうるさい子だと思っていたけど、最近はよく神妙な顔つきをしている。何かあったのかな。
「そっちは逆じゃないか」
「ここからの方が近いの。図書室行ってないの?」
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