蝋燭の館より目覚め

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薄暗い空間――― その中で数え切れないほどの小さな紅色の光がゆらゆら揺れている。 ここは…どこ? 私は一体何をして…… いや、そもそも私は何? 「おや、お目覚めでございますか。気分の程はいかがです?」 突如薄暗い空間より声が生じた。私は慌てて辺りを見回す。すると周りより少しだけ大きな紅い光が足音と共に近づいて来た。 「あっ…貴方は?」 「これは失礼。私はこの蝋燭の館の管理人ジェイスと申します」 ジェイスと名乗った者は左手に燭台を持ち、右手を左胸に当て深々とお辞儀する。 彼は黒い長髪を後ろで束ね、黒い服装を身に纏っている。 「あっ、私はヴェイと言います。……今はそれしか分からなくて…。あの…ここは何処ですか?」 「ここは……おや、主様がいらっしゃいました」 言い切ると静かにいた場所から少し下がり頭を下げている。 ―― チリン…チリン… 鈴の音が暗闇に響き、伽羅の香りが辺りに漂う。 「おぉ…意識を取り戻したか……見捨てられた天子よ」 薄暗い中で聞いたその声は優しく、また神秘的だ。しかしどこか妖しく不思議な感じがした。
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