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先に沈黙をやぶったのは父さんだった。
「今日も、学校に行ってないのか。」
僕は、また説教されるのかと思って、父さんの表情を気にしながら小さく頷く。
さらに動悸が激しくなる。
緊張という名の空気が取り巻く。
鏡越しに父さんは、僕の小さな反応を確認して、さらに続ける。
「母さんには、何か変わったことなかったか。」
あれ。
説教はされなさそうだ。
「いつもと変わらないよ。父さん聞いてよ!
母さんに、頭叩かれすぎて馬鹿になっちゃった。」
僕は、重苦しい空気を一変しようと、わざとおどけてみせた。
僕の返答から、しばらくの沈黙があり、「母さんをよく見てろよ。」と言い残し、風呂場から出ていってしまった。
変な父さん。
私は、この時はまだ父の言葉の意味が分からなかった。
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