明け方の空は、爽やかで

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あまりに突然の出来事。 母さんは、洗い物をしていた。 僕は、横に座り、母さんに話しかけていた。 野球の話をしようとした時だった。 母さんが倒れるのを、みた。 その瞬間は、 きっと一瞬だった。 けれども、僕にとって、 その一瞬は、とても長く永く感じられた。 まっさらな皿が、 泡にまみれたスポンジが、 地面へ向かう。 落ちる。 落ちる。 そして、大きな音を立てて着陸する。 出しっぱなしの、水の音だけが、 轟々と響いていた。 私は、未だにこの音を、 鮮明に覚えている。
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