母のいない日々は

4/11
前へ
/76ページ
次へ
水を一通り撒き終わった。 なんともいえない充実感。 額からは滝のように汗。 頭の上から太陽が自己主張。 もう昼になっていたようだ。 夢中になると、時間を忘れる。 散歩に出かけるつもりが、庭から一歩も出ることはなかった。 僕は庭でひとり、苦笑いを浮かべながら縁側に寝そべった。 気持ち良い。 空を眺める。 雲が雲を追いかけている。 白色の絵の具を、 青色の画用紙に塗りたくったような空。 雄大で、清々しい。 母さんの入院。 そんな不幸を一瞬でも忘れさせてくれる。 風鈴の音が、心地よく耳を撫でる。 チリンチリン・・・ 波風のようにも聞こえる。 そういえば、去年の夏に 家族4人で海水浴に出かけたっけ。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加