闇の種

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現れた車は薄汚れた作業車。そして、その中から作業服姿の男が恭二に声を掛ける          「斎藤君かな?」    『はい!』    「ああ~良かった来てくれてたんだね。さあ……現場行くから乗って乗って」    『失礼します』    恭二は静かな口調で喋ると、薄汚れた作業車に乗車。そのまま作業現場まで向かう事となったのだ。    作業車の中は、弁当のゴミや泥で汚れていて、恭二は作業車の足元に散乱するゴミを足で払い除ける。          (今の俺には、こんな汚い格好がお似合いだな。薄汚れた人生……フフッ!)          恭二の心に歪んだ感情が過ぎる。当然、恭二だって自らが好んで就職した訳では無い。    学校の勉強が困難だと感じた事など1度も無い恭二は、高校進学を強く希望していた。    しかし、思わぬ所で人生の進行方向が狂い、恭二は複雑な心境の中で就職する事を決断したのだ。    勿論、母親はそれを知らない。          (俺に……こんな人生を歩かせた父親には絶対に復讐してやる)    (そして母親をこんな目に合わせた神様を呪ってやる!)    (俺はそうやって生きるんだ……生き抜いてやるんだ)          眉間にシワを寄せ、怖い表情をしてる恭二に、作業車を運転する男が喋り掛けて来た。          「斎藤君?気分でも悪いのかい?」    『あっ!いえ……少し考え事してただけです』    「朝から考え事してると疲れちゃうよ?初日だから緊張するだろうけど気楽に行こうね?あっ!俺は御手洗って言うから……宜しくね?」    『斎藤です。宜しくお願いします』    静寂な態度を貫き通す恭二の闇の種は、物凄い速度で成長し、どんどん恭二の心を蝕んで行く。    あれ程、素直だった恭二だが、今は冷めた眼付きに暖かさを感じ無い態度。    そして捻た思考回路。    恭二を侵食する闇の種は、父親への憎悪が引き金となり、一気に開花するのだ。    そんな中、現場に到着し作業が始まった。    重たい物を沢山運ばされ、昼飯の時間になる頃、恭二は疲労困憊状態となる。          (負けねぇ~!こん位で負けねぇ~よ!)    恭二は初めて働く事の辛さを味わうが、今の恭二の気持ちは強い。    その強い気持ち1つで建設会社の仕事を持続させたのだ。   
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