3631人が本棚に入れています
本棚に追加
現れた車は薄汚れた作業車。そして、その中から作業服姿の男が恭二に声を掛ける
「斎藤君かな?」
『はい!』
「ああ~良かった来てくれてたんだね。さあ……現場行くから乗って乗って」
『失礼します』
恭二は静かな口調で喋ると、薄汚れた作業車に乗車。そのまま作業現場まで向かう事となったのだ。
作業車の中は、弁当のゴミや泥で汚れていて、恭二は作業車の足元に散乱するゴミを足で払い除ける。
(今の俺には、こんな汚い格好がお似合いだな。薄汚れた人生……フフッ!)
恭二の心に歪んだ感情が過ぎる。当然、恭二だって自らが好んで就職した訳では無い。
学校の勉強が困難だと感じた事など1度も無い恭二は、高校進学を強く希望していた。
しかし、思わぬ所で人生の進行方向が狂い、恭二は複雑な心境の中で就職する事を決断したのだ。
勿論、母親はそれを知らない。
(俺に……こんな人生を歩かせた父親には絶対に復讐してやる)
(そして母親をこんな目に合わせた神様を呪ってやる!)
(俺はそうやって生きるんだ……生き抜いてやるんだ)
眉間にシワを寄せ、怖い表情をしてる恭二に、作業車を運転する男が喋り掛けて来た。
「斎藤君?気分でも悪いのかい?」
『あっ!いえ……少し考え事してただけです』
「朝から考え事してると疲れちゃうよ?初日だから緊張するだろうけど気楽に行こうね?あっ!俺は御手洗って言うから……宜しくね?」
『斎藤です。宜しくお願いします』
静寂な態度を貫き通す恭二の闇の種は、物凄い速度で成長し、どんどん恭二の心を蝕んで行く。
あれ程、素直だった恭二だが、今は冷めた眼付きに暖かさを感じ無い態度。
そして捻た思考回路。
恭二を侵食する闇の種は、父親への憎悪が引き金となり、一気に開花するのだ。
そんな中、現場に到着し作業が始まった。
重たい物を沢山運ばされ、昼飯の時間になる頃、恭二は疲労困憊状態となる。
(負けねぇ~!こん位で負けねぇ~よ!)
恭二は初めて働く事の辛さを味わうが、今の恭二の気持ちは強い。
その強い気持ち1つで建設会社の仕事を持続させたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!