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それから1週間後……
「斎藤君、毎日御苦労様。これが1週間分の給料だ」
『ありがとうございます』
恭二は社長から給与を受け取ると、給与袋を無造作にポケットの中へと押し込む。
「しかし……何か訳があるのか?1週間毎に給料を必要とするのは……」
『……生活費です!』
「生活費?何故だ?母親と同居だろ?1人暮らしでもするつもりなのか?」
『ウチは貧乏なんで生活が苦しいんです。この金は母親との生活費に当てます』
「なっ!斎藤君!」
『………』
「そうだったのか!余計な事を聞いたね……失礼した。お袋さん……大事にしてやりなよ?」
『はい!』
恭二は社長との会話を終え、そのまま自宅へと帰宅する。
汚れたまま帰る訳にもいかないので、顔と頭を駅のトイレで洗浄した後、綺麗な学生服姿で帰宅した。
『ただいま!』
恭二が帰宅するや否、母親である美樹が血相を変えて恭二に向かって来るではないか。
「恭二。貴方、今日学校はどうしたの?」
『………』
(遂にバレたか!仕方無い…)
「どうしたの?って言ってるでしょ?」
『……休んだ』
「どうして休んだの?そして何処に行ってたの?」
『うるせぇ~な!俺が何処に行こうと関係無いだろ?』
「なんね!その口の聞き方は…」
『うるせぇ~つってんだろ?』
恭二はそう言った直後、ポケットから給与袋を取り出し、美樹に投げ付ける。
『俺は、もう学校には行かねぇ~よ』
美樹は恭二が投げた給与袋を拾って中を見る。すると中には30000円が入っていた。これには美樹も驚きの表情を隠せない。
恭二は週6日勤務。1日1000円を食事代として前借りしていた為、1週間の給料が30000円だった。
「ちょっと恭二!このお金はどうしたの?」
『何でも良いだろ?それを借金の返済に回せ』
「どうしたの恭二?最近口の聞き方まで悪くなって…」
『今までと変わらねぇ~よ。』
恭二は美樹に捨て台詞を吐くと、そのまま家を飛び出してしまう。
(こんな……不公平な世の中が苛々するよ!)
苛立ちを隠せない恭二が家を飛び出して向かった場所が、繁華街であったのだ。
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