闇の種

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繁華街は綺麗なネオンと沢山の人で溢れかえっている。    無造作に路駐されてる高級車。綺麗な女性を引き連れて歩くスーツ姿の男性。    それを見た恭二は……          (何故だ?同じ人間であるのに、この生活水準の違いは何故だ?)          不公平な世の中に怒り覚え、その怒りの矛先を何処に向けて良いか解らず、苛立ちを感じた。          (俺は何故こんな目に遭うんだ?)    (誰か助けてくれないのか?)    (………)    (クソッタレが……)          色々な思考を過ぎらせる中、切ない感情が恭二を襲い、恭二の瞳から自然と涙が零れ落ちる。    未来が見えない事で希望が持てない。現状しか見ないが故に、絶望を感じる。    複雑な心境の中、恭二の頭では色々な思考や感情が交錯したのだ。          (親父が借金を残したからだ…)    (クソッ!絶対に……ぶっ殺してやる)          自分が不幸だと思う気持ちが増幅する度、恭二の怒りも増幅する。それと同時に他人の幸福が許せなくなる。    しかし、これは負け犬の思考。嫉妬の念が強いだけでは無く、自分が可哀相だと思う心を捨て切れない上に、自分を悲劇の主人公にまでに仕立て上げる恭二の弱さ……    恭二は社会に出て就職する事を選択したが、守るべき者への覚悟と決意が不足していた。    仕方無く決断した選択は不満を増幅させ、その不満は何時しか憎悪へと変わる。    その絶頂期にいるのが今の恭二。年齢は15歳……    その重さを理解するには、余りにも未熟であり、打開策は皆無に等しいだろう。    絶望を感じたまま繁華街を歩く恭二は、怒りと憎しみの履け口も無い。          (俺は一体何をすれば良い?何の為に生まれた?さっぱりと解らない……)    (こんな人生を歩む位なら……生まれなければ良かった)    (苛々する!)          恭二にとって生き抜くと言う選択は、自分の復讐の為であり、自己満足でしかなかった。    父親の憎悪は日々膨れ上がり、怒りの履け口を求め続ける。    母親が可哀相……    その気持ち以上に強い怨念。それをコントロ~ル出来なくなれば、恭二は何れ暴走するだろう。    苛立ちを隠せない恭二は、そのまま繁華街をさまよいながら闇の中へと姿を消した。   
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