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恭二は病院に到着すると、直ぐに受け付けで斎藤美樹の名前を尋ねる。
すると3階の部屋へ案内された。その部屋の中では美樹が眠っている。
『看護婦さん。母さんは何故倒れたんですか?』
「過労です。今……先生を呼んで来ますので話しを聞いて下さい」
(過労って……母さんは、こんなになるまで働き続けたのか?)
(母さん……疲れが貯まってたんだね……)
恭二は美紀の身を安じながら、ベット横のパイプイスに腰掛ける。
恭二は自分がこんな人生を送った事を不公平だと決め付け、その怒りを父親のせいにした。
だが、考えてみれば自分より母親の方が可哀相な人生を送ってると悟った。
人は自分より辛抱している人間を見て、自分の甘さに気付くものだ。恭二も同じ気持ちだったに違い無い。
(父親の借金を肩代わりする事で、自分の事など考える暇も無かったんだろうね)
(それに比べて俺は……)
(だが、やはり世の中は不公平だ!)
(もっと金を手にしてやる……金さえ有れば母さんは過労で倒れる事なんて無かったんだ!)
(今に見てろよ!?)
恭二の気持ちも解る。しかし、自分の事しか考えれないのは未熟な証拠だ。
恭二はそれに気付いた……
そして、何かを決意する様な思考を過ぎらせると同時に、母親を苦しめた現状をも憎む。
恭二の思考は目の前で眠る美樹を見て、自分より弱い者の為に犠牲になる覚悟の現れだった。
恭二が美樹を見て、色々と考え込んでる、その時だ…
「斎藤さんの息子さんですね?」
先生が部屋に来る。
『先生、母さんは大丈夫なんですか?』
「過労です。3日も安静にすれば良くなるでしょう。ただ……精神的にも疲れてそうな感じもします!」
『そうですか……』
(あれだけ借金に悩まされ、俺と美鈴を養う為に身を削る思いで働いたんだ……疲れるに決まってる)
(母さん……ゴメン!)
恭二は美樹の現状を目の当たりにして、部屋で大きな溜め息をつく……
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