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題名『そんな君が…』
「だからさ……そんな君が好きなんだ」
僕は、彼女の顔を見たくて、見上げながら覗き見た。
彼女は、無表情。
でも、僕は伝えたかった。
君が好きで、君のくれるご飯は美味しくて、君が僕を見つめる顔がとても美しくて、そして、たまに笑う君の笑顔が可愛くて……。
そう、僕はとても君を好きで…………君を愛してる。
そんな事を考えて居たら、顔が熱くなった。
どうしょう、今僕はどんな顔をしてるんだろう。
はっ、恥ずかしい。
僕の心臓は、早鐘の様に打ち鳴り響いて居た。
――ドキドキッ、ドキドキッ――
僕は覚悟を決め、どれだけ君の事を好きか伝えた。
「僕は、君の笑う笑顔が好きで、君が撫でてくれるその手も好きで、君のくれるご飯は美味しくて、たまに見る君の哀しそうな笑顔でさえも、美しくて好きです。だから僕は、………君の事が好きで、好きで、……大好きなんですッ」
僕は、巻くし立てる様に言った。
僕は、ちょっと恥ずかしくなって、彼女から視線を外しうつ向いた。
どうだったかな?
“今日は、ちゃんと伝えれたかな?”
そうやって待って居たら、上から彼女の声が降って来た。
「アレ?コジロー?なんでこんな所に居るの?……さ・て・は、またご飯をおねだり?ダ~メッ!さっき、食べたばっかりでしょう。……まったく、台所まで来るんだからぁ」
「ミャ~~オォ。にゃうぅ(ちっ、違うよ。僕は…)」
台所と言う所で、何かをして居る彼女の足元にたたずんで見上げている一匹の黒猫が、僕。
僕は、猫だ。
名前は コジロー。
僕はいつも彼女に告白している。
でも、何故か気付いてもらえない。
僕は一生懸命に伝えて居るのに、気付いてもらえない。
僕は、彼女の脚に頭をこすりつけた。
「な~ぅ(僕は……)」
「もう、ダメッたらダメ!………はぁ」
彼女は、そっと僕の頭を撫でてくれた。
僕は顔を上げ、彼女を見た。
彼女は、仕方ないという感じで微笑んで、僕の下顎を撫でてくれた。
――ゴロゴロ……―――
『僕は、そんな君が好きなんだ』
終わり
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