ボツ小説

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題名『MemoryMark』続き (親友編)       …………最悪だ。   ぼーっとした頭にそんな言葉が浮かんできた。   今日の契約者は賞金稼ぎになって間もない青年。   初めて下級魔物討伐の依頼を受けるため自分がサポーターとしてつく事になったのだが。   魔物に出会った途端に錯乱し、こともあろうにオレに斬り付けてきやがった。   予想外の出来事に避けきれず腕に怪我を負い、おまけとばかりに敵にも襲われた。   イオはため息をつき体を起こす。   頭に鈍い感覚。 後頭部を触ると大きなこぶが出来ていた。 右腕には青年に斬り付けられた傷。   他に外傷は見当たらない。    「あの野郎……今度会ったら覚えてろ」   舌打ちして立ち上がる。   このまま雨の降る中にいたら凍えてしまう。   確か小屋がどこかにあったはずだ。   ゆっくり小屋がある方向に歩き始めたとき。   咆哮。   魔物が人間を見つけた時の歓喜の雄叫び。   まさかさっきの魔物――?    咆哮が聞こえた場所へ向かって駆け出す。   背丈以上の草が生えた道を走りながら腰のベルトに手を伸ばし短剣を構える。   突如視界が開ける。   舗装された街道には倒れている青年と様子をうかがっている魔物。   青年は気を失っているのか動く気配はない。   近くにあった小石を取り魔物に向かって投げる。   小石は魔物には当たらず街道に落ちる。   しかし、その音によって魔物の注意は青年からイオへと移った。   今だ!   地面を力強く蹴り跳躍。 魔物の正面に着地。   魔物がイオに気付き巨大な腕を振るう寸前。   短剣を心臓に突き刺し一気に振り上げ喉を切り裂く。迸る血飛沫。 遅れて甲高い絶叫が辺りに響く。   魔物の体に亀裂が入り粉々に砕け散った。   なんとか魔物を倒せて安堵の息を吐く。   さてと――。   気を失っている青年に目を向ける。   派手にやられてんなぁ、この人。   思わず青年の体をまじまじと見つめる。   青年の体には無数の生傷、古傷があった。 顔も殴られたのか腫れている。 魔物にやられた、というよりは人間にやられたとしか考えられない。   青年の隣にしゃがみこむ。    「おい、しっかりしろ! 聞こえてるか?」   軽く頬を叩く。   青年は軽く呻いただけで目を覚まさない。   「しょーがねぇな……」      
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