2人目の患者

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ある程度書き終わり、僕がその見とり図を眺めているところだった。 どんどん.. 不意に静かな部屋に扉を叩く音が響いた。 僕は慌てて見とり図を枕の下に隠す。 時刻は5:51。 ウメダさんにしては早いなと思いながらも扉を開けた。 あ.. 僕は扉の前に立っている人物を確認して思わず1、2歩後退りしてしまった。 「なんだよお前、そんな恐い顔してんなよ。」 院長はそんな僕を見て鼻で笑うと、突っ立ったままの僕を無視してズカズカと部屋の中へ入ってきた。 「ヒロミはちょっと出てっからわざわざ俺が持って来てやったんだ、感謝しろよ。」 部屋を見回しながら恩着せがましくそう言うと、机の上に銀のお盆と着替えをおく。 そして机の端に置いたレポートを手に取り、それを読みながら僕の横まで歩いてきた。 「クックックッ..」 レポートに目を通しながら明らかに馬鹿にしたように笑う院長。 僕は思わずギリギリと拳を強く握った。 そんな僕に気付き顔をあげた院長は 「おっと、すまんすまん。 はいっこれ」 と言って脇に抱えていたものを僕に渡した。 フクダ ミホの時と同じように文字とグラフで埋められた3枚の資料。 ただあの時と違うのは、あどけない笑顔で笑う少女と違い、SS級犯罪者といっても納得できるような悪人面の男の顔写真が張ってあることだ。 こいつの話しを聞くのか.. 僕は思わずゴクリと唾をのむ。 そんな僕をニヤニヤと見つめながら、院長は 「こいつがお前の対面する2人目の相手だ。 クックッ..安心しろ、俺達には契約があるから襲ったりはしねーよ。」 と面白そうに言った。 そして続けて 「あと、そいつの部屋はフクダの部屋の前を真っ直ぐ行って左に曲がってさらに真っ直ぐ行って突き当たりを右に曲がったところだ。 まあ..お前なら分かるだろう?クックックッ」 と言い、意味ありげにニヤついた。 僕はエ?と怪訝な顔をしながらもコクリとうなづく。 それを見て院長は 「じゃあ俺は戻る。 飯食って準備ができたら勝手に行ってくれ」 と言って不気味な笑みを浮かべながら部屋から出ていった。
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