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クチャ クチャ クチャ
ああ..
物足りない..
クチャ クチャ クチャ
この食感..
全然違う..
クチャ クチャ クチャ
我慢..
出来ないよ..
どんどんどんッ
「カズちゃん!
ちょっとカズちゃん!!」
耳障りな甲高い声とともにドアをノックする音が聞こえた。
「うるさいな..」
呼ばれた本人は面倒臭そうにぶつくさと呟きながらのっそりと立ち上がる。
ノダ カズオ、31歳。
職業なし。
彼女なし。
趣味はゲーム、インターネット。
いわゆる典型的なニートである。
現在母親と2人でアパート暮らしをしていた。
ガラガラッ
カズオはドアの反対側に取り付けられた大きめの窓を開けると、手早く新聞紙の上に広げられた蛙を丸ごと外に放り投げた。
ビチャッ
引き裂かれていた体から臓物が漏れ出る。
どんどんどんッ
「カズちゃんっ早くここを開けなさい!!
大家さんがいらっしゃってるのよ!!」
再び母親の声が響いた。
この声、いつ聞いても勘にさわる..
カズオは眉間にシワを寄せながらもゆっくりとドアに手を掛ける。
ガチャッ
「ちょっとカズちゃん、ママがいる時は鍵を掛けないでって言ってあるでしょう」
ドアを開けた途端母親が無理矢理体をねじ入れてきた。
そのポッチャリとしたシワの深い顔は悲しみの色をたたえている。
カズオはチラリと一瞬だけそちらに目をやると、何も言わずに母を押し退けて玄関へと向かった。
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