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「片岡…さん?大丈夫ですか?」
何の反応も返さない片岡に、強くやり過ぎたのかと心配になり、覗き込むように見ながら聞く。
「…っ、…い、いや、大丈夫。」
慌てたように返事を返す。片岡は、誤魔化すようにコーヒーに口をつける。
「…美味い」
「そうじゃろ?ワシも、ここのを飲んでから他が全く飲めんようなってのー」
片岡の言葉に、浅桐が賛同する。もしかして、対立した組織にいるから啀み合うだけで、実はそう気が合わなくはないんじゃ、と夕夜は思う。口には出さないが。
「確かに、他のところじゃ、こんなに美味いコーヒーは飲めないな」
片岡の素直な誉め言葉に、照れて口が弛みそうになるのを必死に堪える。
「…そんなに我慢しなくても、素直に喜んで良いんだよ?」
片岡は、そっと笑いながら言った。
…何で、この人にはわかるんだろう。二回しか会っていないのに。
「そろそろ、戻らないと。また、ここに来ても良いかな?」
席を立ち、レジへと向かう。気付かぬ内に結構時間が経っていた。
「あの…片岡さん…、これ…」
会計を済ませ、店を出ようとする片岡を呼び止め、一枚のメモ紙を渡す。
「番号とアド…です。あげます」
何となく照れてしまい、そっけなく言う。
実は、片岡にもらったまでは良いが、どうすればいいのかと悩んで連絡出来ないでいた。
片岡も、番号は聴取の時に聞いて知っていたはずなのに、それを使って掛けてきたりはしなかった。
職権を乱用しない片岡に好感を持てた事で、今に至る。
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