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「とりあえず、名前と年、住所と職業は?」
「咲月夕夜(サキヅキユヤ)。21歳、職業はマンションの大家とカフェのオーナー」
「若いのにオーナーとはすごいね」
片岡が手帳に書き留めながら、少し驚いた風に言う。
「そうでもないよ。趣味で始めただけだし、マンションだって、カフェの資金だって親の遺産だし」
何気ない風を装いながら言う。
「ふーん。じゃ、聴取続けようか。えー、発端は犯人がぶつかってきた時に被害者の叫び声を聞き、友達に荷物を預け追い掛ける。犯人が信号を渡るのを確認し、自分も渡ろうとするが信号が点滅し始めた。このままじゃ、犯人に逃げられてしまうと思い、片方の靴を脱ぎ、犯人にぶん投げ転倒させた。と、こんな感じ?」
すごい早口で捲くし上げられ、目を見張る。しかも、すべてその通りだった。
「…見てたんですか?」
もしくは、心を読むとか…
「いや。君の友達が説教中に言ってたよ」
…んな訳ないか。
「じゃ、聴取とかいらなくないですか?」
「こういうのは本人の口から聞かないといけないんだ」
…いや、あなたの口から出てますけど。
喉まで出かかったものを無理矢理押し込め、誤魔化すためにコーヒーに口をつける。
(…ここの不味いな)
「ここの不味いな」
はっと、片岡を見る。本当に心を読めるのか。
「…ここ、皺寄ってる」
笑いながら、夕夜の眉間を指で突く。
予想外の行動に鼓動が跳ねる。頬が熱くなるのを感じ、俯いた。
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