54人が本棚に入れています
本棚に追加
「それで我が姫は、何処に行くのかね?」
中納言の問い掛けに、橙姫は嬉しそうな顔で返事をする。
「朱鷺にお花畑に連れていってもらうの」
「あの……その……だいだいが……あっ、橙姫様はお体が丈夫でないって聞いて……、最初は、鬼ごっことかしようと思ったんだけど……」
中納言に、体の弱い橙姫を連れ廻すなと叱られるかと、朱鷺がしどろもどろに説明する。
中納言が橙姫を溺愛してることは、橙姫に話し掛ける表情や口調で分かった。
「私が行きたいって言ったの」
そこへ橙姫が助け船を出す。
「よいよい、何も責めてる訳ではない。姫がいつになく楽しそうなのでな、聞いてみたかっただけじゃ」
二人の慌てる様子に、笑いを堪えながら中納言は、そう言った。
二人は、行くのを止められるかと心配していたが、その言葉に安堵し笑い合う。
「中納言様、私達も花を愛でに行きませんか?」
鶯がソッと中納言に耳打ちをする。
「おお、それは良い案だな。我らも付いていってもいいかな?」
中納言は二人の顔を交互に見ながら問い掛けた。
橙姫と朱鷺に断る理由は無い。
二人は勢い良く笑顔で頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!