第一章

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  「それで我が姫は、何処に行くのかね?」  中納言の問い掛けに、橙姫は嬉しそうな顔で返事をする。 「朱鷺にお花畑に連れていってもらうの」 「あの……その……だいだいが……あっ、橙姫様はお体が丈夫でないって聞いて……、最初は、鬼ごっことかしようと思ったんだけど……」  中納言に、体の弱い橙姫を連れ廻すなと叱られるかと、朱鷺がしどろもどろに説明する。  中納言が橙姫を溺愛してることは、橙姫に話し掛ける表情や口調で分かった。 「私が行きたいって言ったの」  そこへ橙姫が助け船を出す。 「よいよい、何も責めてる訳ではない。姫がいつになく楽しそうなのでな、聞いてみたかっただけじゃ」  二人の慌てる様子に、笑いを堪えながら中納言は、そう言った。  二人は、行くのを止められるかと心配していたが、その言葉に安堵し笑い合う。 「中納言様、私達も花を愛でに行きませんか?」  鶯がソッと中納言に耳打ちをする。 「おお、それは良い案だな。我らも付いていってもいいかな?」  中納言は二人の顔を交互に見ながら問い掛けた。  橙姫と朱鷺に断る理由は無い。  二人は勢い良く笑顔で頷いた。
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