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朱鷺と橙姫は、手を繋ぎ歩き始める。
それを見た大人達は、あまりの可愛らしさに、思わず微笑む。
少し年上の朱鷺は橙姫を気遣い、ゆっくりと歩く。
橙姫は朱鷺の優しさに感謝しながら甘え、極上の笑みを朱鷺に返す。
二人は自然と心惹かれ合った。
「朱鷺は何処の花畑へ、行こうとしたの?」
鶯が前を歩く朱鷺に、問い掛けた。
顔だけを後ろに向け朱鷺が返事を返す。
「丘の上の所だよ」
「あら、今だったら蓮華峡が素敵なのに」
「あっ!そっか!じゃあ蓮華峡に行こう!」
「蓮華峡?」
橙姫が首を少しだけ傾げながら、朱鷺の顔を見る。
「そう、蓮華峡。ここら辺の人達が、みんなそう言ってる所だよ。蓮華草が沢山咲いてるんだ」
「わあー、楽しみ」
橙姫が嬉しそうに笑う。
その様子を中納言は、目を細め見ていた。
「どうかしましたか?」
鶯が黙ったままの中納言を心配する。
「いや、ああして笑う姫を見たのは久方振りなのでな。嬉しく思ってたのよ」
「それは良かったですね」
「うむ。だが……これが最後の笑顔になるやもしれんとなると……な」
「そこまで悪いのですか……?」
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