第一章

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   メキメキという音と共に、体にも変化が現れていた。  大きさはそのままなれど、細く柔らかな腕と足に筋肉が盛り上がり、胸も服を下から押し上げている。  細く小さな指は、長い爪を生やしていた。  朱鷺はおもむろに右手を頭へと伸ばす。  朱へと変わった瞳は橙姫を見つめたまま。  長い爪を持った指がある物に触れる。  朱く、太陽の光にキラキラと輝き、風になびく長い柔らかな髪の中にそれはあった。  先の尖った二本の角。  朱鷺はその内の一本を掴む。  橙姫を見つめる切れ上がった目が一瞬弛むと、瞳に柔らかな光が灯る。  目を閉じ、息を短く吐く。  目を見開くと同時に全身に力を込め、握った角をへし折った。  乾いた音が響き、体に激痛が駆け巡る。  朱鷺は痛みをこらえ、折ったばかりの角を見る。  乳白色に輝き、滑らかな表面の角は、暖かな力をたたえていた。  朱鷺はその角を、橙姫の手に握り込ませる。  橙姫の小さな手に包まれた角から、柔らかな光が溢れたのは一瞬の事だった。  橙姫の頬に赤みが差し、浅く短かった呼吸がゆっくりとしたものになる。  苦しそうな表情は消え、静かな寝顔となった。image=95326809.jpg
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