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「朱鷺、あなた何てことを……」
鶯は愕然としながらも、後を追ってきた中納言達に朱鷺の髪を見られないように、羽織っていた衣で朱鷺を覆い隠す。
「鶯、どうしたのだ?そんなに慌てて……橙!?」
中納言が倒れている橙姫に気付き、慌てて橙姫を抱きかかえる。
「橙!しっかりするんだ!橙!」
「ん、んん……」
中納言の呼び掛けに、橙姫はさも眠たそうに身をよじる。
「眠っておるだけなのか?」
中納言は胸を撫で下ろす。
よく橙姫の顔を見れば、いつも真っ白だった筈が、赤みを持ち肌に艶と張りがある。
「これは一体……」
中納言は朱鷺を抱える鶯を見た。
「朱鷺が一族に伝わる秘宝を渡したのでしょう。その代わり朱鷺が……」
「それはいかん!すぐさま屋敷へと送ろう」
中納言が供の者に何事か指示を出す。
「中納言様」
「何だ?」
「橙姫様が握っている物はとても……とても大事な物です。決して橙姫の肌から離さぬようお願いします」
「分かった。これが何なのかは聞かぬ。大事にさせよう」
「ありがとうございます」
そして橙姫は中納言の屋敷へ、朱鷺は自分の屋敷へと運ばれた。
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