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橙姫が目を覚ますと、最近やっと見慣れてきた、天井が見えた。
(あれ?私……お部屋で寝てたんだっけ?)
まだはっきりとしない頭に、朱い瞳が思い出される。
(あっ!そうだ!私、苦しくなって……)
橙姫にその時の苦しさが甦ってきた。
最初は小さな咳。
次第にそれは激しくなり、呼吸が出来なくなってくる。
胸が激しい痛みに襲われた。
そして、口の中に広がる苦くて、生暖かい液体。
それは口からも、口を抑えた指の間からも、溢れ出す。
指を伝い、地面へと落ちたそれを見た時、死を意識した。
それは血だった。
自分の体から血と共に、熱と生きる気力が流れ出ていくのが分かった。
死を意識し、体が震え、得体の知れない恐怖に包まれる。
気が遠くなり、体が倒れる。
そこを誰かが受け止めてくれた。
優しく、柔らかに。
かすみ始めた視界にその人の顔が見えた。
心配そうにのぞき込むその瞳は、柔らかな朱い光を称えていた。
(そうだ、あの優しい目は朱鷺……あっ!朱鷺は?)
橙姫は上に掛かっていた上掛けを、跳ね除けながら起き上がる。
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