第一章

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 「あら、目が覚めた?」  橙姫が跳ね起きるのと同時に、鶯が御簾を上げながら、部屋に入ってくる。  「駄目よ?まだ横になってなきゃ」  そう言いながら、橙姫の方へ近寄っていく。  鶯はどこぞの村人かと思われるくらいに、簡素な服を纏っていた。  これから中納言の妻になろうとも女性がである。  本来なら例え屋敷の中でも、少なからず着飾り、女房達にかしずかれているはずであった。  部屋の外から、女房達の声が、橙姫に聞こえてくる。  「鶯様、橙姫様の御看病は、私どもがやりますのに」  「中納言様に私どもが叱られてしまいます」  それを聞いた鶯が、返事を返す。  「良いのです。私がしたいのですから。中納言様には私から伝えてありますから、大丈夫ですよ」  「では、せめてお召し物を」  「看病をするのに、これほど楽な姿はありませんよ?」  「ですが……」  「良い、と言っているのです。橙姫のお体に障りますよ?下がっていて下さいな」  「分かりました」  女房が渋々ではあるが、そう返事を返すと辺りは静かになる。  鶯はあっけに取られている橙姫に、優しく微笑み、おどけた様に小さく舌を出した。
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