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「気分はどう?悪くない?」
鶯は橙姫の脇に膝を下ろした。
「えっ……と、うん、大丈夫」
「良かった。ちょっとごめんね」
鶯は袖を抑え、橙姫の額に手を当てる。
橙姫は、柔らかな手が自分の額を優しく触れるのを、心地よく感じた。
「うん、熱も無いみたいね」
鶯は満足気に頷くと、ニッコリと微笑んだ。
「何か欲しい物ある?」
「ううん」
橙姫は首を軽く左右に振る。
「遠慮しなくてもいいのよ?」
「あの……」
「なあに?」
「朱鷺は?」
橙姫がそう問うと、鶯の顔が笑顔のまま暗く沈む。
「朱鷺はね……」
鶯は言葉を繋ぎながら、橙姫の背に手を回し、横になるようにとソッと促す。
「まだ目を覚まさないの」
上掛けを肩まで掛け直し、橙姫の頭を優しく撫でる。
「覚まさないって具合悪いの?」
「ちょっとだけね。あなたの首に、石が掛ってるの分かるかな?」
橙姫は自分の胸の辺りをまさぐる。
着物の下に何か固い物があるのに気付いた。
首に手を回せば、紐が掛っている。
紐を手繰り寄せると、先には小さな巾着が付いていた。
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