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白い小さな花模様が散りばめられた、赤い生地が袋状になり、赤い紐が通され首へと廻る。
巾着は橙姫の掌よりまだ小さかった。
「これなあに?」
橙姫が巾着をつまんでみると、中に丸く固い物が入っていることが分かる。
「それはね、とっても大切な物なの。だから絶対に無くしちゃ駄目よ?」
「絶対に?」
「そう、絶対に」
鶯がそう真剣な顔で頷く。
「朱鷺がね、あなたにあげたの」
「朱鷺が?」
途端に嬉しそうになる橙姫。
「だからね、約束。指切りしよっか」
「うん」
二人は小指と小指を絡め合い、声を揃える。
「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーますっ、指切った!」
指を離すと二人は笑い合う。
「中、見てもいい?」
「いいわよ」
橙姫は真剣な表情で、慎重に巾着を開ける。
その真剣な表情は、巾着を……朱鷺がくれた巾着を、大事にしようとする橙姫の気持ちの表れだった。
そしてそれは、たった今行われた鶯との約束も、大事にすることも同時に表している。
鶯はこの小さな姫が、とても愛しく感じられた。
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