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「わあ、綺麗!」
小さな巾着から出てきたのは、乳白色でありながら、角度によって瑠璃色に輝く小さな玉だった。
橙姫は手の平に出した小さな玉を、ソッと指で持ち上げ、繁々と見つめる。
「それはね、元々は違う形だったんだよ」
鶯は少し寂しげに呟いた。
「違う形?どんな形だったの?」
そう問掛ける橙姫の視線は、玉から離れる事は無かった。
「内緒っ。……でも、いつか分かるときが来るかもしれないわね」
「いつか?」
「そう、いつか……。それまで大切に持っててね?」
「うんっ!」
橙姫は玉からやっと視線を外し、鶯に頷き返す。
その顔は笑顔で満ち溢れていた。
鶯はその顔を見て、優しく微笑み返す。
「さっ、もう少し寝た方がいいわ」
「うん」
橙姫は、玉を大事そうに巾着へと戻すと、着物の中へと入れ、横になった。
鶯が上掛けを直す。
「あの……」
「ん?なあに?」
「あの……名前……」
モジモジと上掛けを引きずり上げ、目だけを出す橙姫。
「私?」
橙姫がコクンと頷く。
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