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「鶯でも母上でもいいわよ?」
「えっと……は、母上」
橙姫の声は、少し照れ臭いのか、震えていた。
「はい、なあに?」
「朱鷺に会えるかなあ?」
「会えるわよ。ちゃんと休んだらね」
「うん。会ってお礼言わな……きゃ……」
橙姫は、言い終わるか終わらないかの内に、眠りへと落ちていった。
鶯は眠った橙姫の髪を、優しく撫でる。
髪は以前と違い、滑らかで艶があった。
(あの子はこれで良かったのかしら……)
鶯は考える。
朱鷺は、自らの力の源である角をへし折り、橙姫へと与えた。
それが自分にとって、どれだけ重大な事か、分かっているはずだが、と。
現に、朱鷺は前の姿と、違っていた。
瞳の色、髪の色は朱に染まっている。
注意深く見れば、牙が生えているのも、分かるはずだ。
(でも、あの子が決めた事なら……)
鶯は誓った。
朱鷺が、守ろうとしている橙姫を、自分も守ると。
だが、そう誓うのは、決してそれだけの為では無かった。
鶯自身が橙姫を気に入ったから。
この愛らしい姫を、助けたくなったのだ。
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