第一章

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 「鶯でも母上でもいいわよ?」  「えっと……は、母上」  橙姫の声は、少し照れ臭いのか、震えていた。  「はい、なあに?」  「朱鷺に会えるかなあ?」  「会えるわよ。ちゃんと休んだらね」  「うん。会ってお礼言わな……きゃ……」  橙姫は、言い終わるか終わらないかの内に、眠りへと落ちていった。  鶯は眠った橙姫の髪を、優しく撫でる。  髪は以前と違い、滑らかで艶があった。  (あの子はこれで良かったのかしら……)  鶯は考える。  朱鷺は、自らの力の源である角をへし折り、橙姫へと与えた。  それが自分にとって、どれだけ重大な事か、分かっているはずだが、と。  現に、朱鷺は前の姿と、違っていた。  瞳の色、髪の色は朱に染まっている。  注意深く見れば、牙が生えているのも、分かるはずだ。  (でも、あの子が決めた事なら……)  鶯は誓った。  朱鷺が、守ろうとしている橙姫を、自分も守ると。  だが、そう誓うのは、決してそれだけの為では無かった。  鶯自身が橙姫を気に入ったから。  この愛らしい姫を、助けたくなったのだ。
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