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「俺と遊ばないか?」
朱鷺は橙姫の前にしゃがみ込み、俯く橙姫の顔を覗き込む。
「これ、朱鷺とやら。姫様はお体が弱いのじゃ。無理を言うでない」
女房が慌てて口を挟む。
「そうなのか?」
朱鷺は橙姫を覗き込んだまま聞く。
少し間が開き、橙姫がコクンと俯いたまま頷いた。
「そっかあ……」
朱鷺は腕組みをして何やら考え込み始めた。
そしておもむろに手を叩くと、橙姫の手を掴んだ。
「これ!何をするか!」
朱鷺は女房の叱りも気にせず、話し出した。
「じゃあ、花を見に行こう!今凄い綺麗なんだ。きっと気に入るよ」
「花?それ綺麗?」
俯いていた橙姫が、嬉しそうに顔を上げる。
「そう、花。だいだいみたいに綺麗だよ」
「だいだい?」
「お前の事だよ。橙っていうんだろ?嫌か?」
橙姫は首を左右に勢い良く振る。
「ううん」
「俺のことは朱鷺って呼んでくれよ」
「朱鷺……私、お花畑に行きたい」
「ひ、姫様?」
女房が慌てている。
「よっし!行こう!」
朱鷺は橙姫と手を繋ぎながら、ゆっくりと歩き始めた。
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