第一章

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  「俺と遊ばないか?」  朱鷺は橙姫の前にしゃがみ込み、俯く橙姫の顔を覗き込む。 「これ、朱鷺とやら。姫様はお体が弱いのじゃ。無理を言うでない」  女房が慌てて口を挟む。 「そうなのか?」  朱鷺は橙姫を覗き込んだまま聞く。  少し間が開き、橙姫がコクンと俯いたまま頷いた。 「そっかあ……」  朱鷺は腕組みをして何やら考え込み始めた。  そしておもむろに手を叩くと、橙姫の手を掴んだ。 「これ!何をするか!」  朱鷺は女房の叱りも気にせず、話し出した。 「じゃあ、花を見に行こう!今凄い綺麗なんだ。きっと気に入るよ」 「花?それ綺麗?」  俯いていた橙姫が、嬉しそうに顔を上げる。 「そう、花。だいだいみたいに綺麗だよ」 「だいだい?」 「お前の事だよ。橙っていうんだろ?嫌か?」  橙姫は首を左右に勢い良く振る。 「ううん」 「俺のことは朱鷺って呼んでくれよ」 「朱鷺……私、お花畑に行きたい」 「ひ、姫様?」  女房が慌てている。 「よっし!行こう!」  朱鷺は橙姫と手を繋ぎながら、ゆっくりと歩き始めた。
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