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「おやおや、そこに行くは、何処の美しい姫君かな?」
不意に後ろから声が掛かる。
三人が振り向くと、そこには数人の共を連れた、雅やかな男がにこやかな顔で、近付いてくる。
「父上」
橙姫が嬉しそうに声をあげる。
乳母はかしこまり、一歩下がると、頭を垂れた。
朱鷺だけが、キョトンとした顔で、男と橙姫を交互に見ている。
「これ、朱鷺。中納言様であるぞ」
乳母が小声で朱鷺に教えた。
「こ、こんにちは」
朱鷺が慌てて挨拶をし、頭を下げる。
「よいよい。そんなにかしこまるな」
中納言は満面の笑みを浮かべ、気にするなと手を挙げる。
そして、たんぽぽを髪にさした、橙姫を見ると更に破顔した。
「おお、似合ってるではないか。どこの公達にいただいたのだ?」
橙姫が照れながら朱鷺を見る。
「朱鷺があげたの?」
驚きの声をあげながら、中納言の後ろから、女性が姿を見せた。
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