第一章

6/23
前へ
/144ページ
次へ
  「おやおや、そこに行くは、何処の美しい姫君かな?」  不意に後ろから声が掛かる。  三人が振り向くと、そこには数人の共を連れた、雅やかな男がにこやかな顔で、近付いてくる。 「父上」  橙姫が嬉しそうに声をあげる。  乳母はかしこまり、一歩下がると、頭を垂れた。  朱鷺だけが、キョトンとした顔で、男と橙姫を交互に見ている。 「これ、朱鷺。中納言様であるぞ」  乳母が小声で朱鷺に教えた。 「こ、こんにちは」  朱鷺が慌てて挨拶をし、頭を下げる。 「よいよい。そんなにかしこまるな」  中納言は満面の笑みを浮かべ、気にするなと手を挙げる。  そして、たんぽぽを髪にさした、橙姫を見ると更に破顔した。 「おお、似合ってるではないか。どこの公達にいただいたのだ?」  橙姫が照れながら朱鷺を見る。 「朱鷺があげたの?」  驚きの声をあげながら、中納言の後ろから、女性が姿を見せた。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加