ワン・ナイト・クリスマス

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>ある小さな街に二匹の黒猫がいました。 >大きなマットは力持ちだけど乱暴者、 >ちっちゃなジェームスは物知りだけど痩せっぽちのひょろひょろ。 >生まれた時から二匹はずっと二匹の野良猫でした。 >その街はとても小さく、猫の足でも一時間あればぐるりと一周できました。人間の足ならきっと15分もかかりません。 >そんな街の人間達はみんな顔見知りのようでしたが、誰一人として二匹の黒猫達の事は気に留めませんでした。 >きっと、マットが乱暴者で、おまけにずんぐりとしたカギしっぽだったのと、 >ジェームスがひょろひょろの痩せっぽちで、おまけにひどくかすれた声をしていたからでしょう。 >そんな訳で二匹はずっと二匹でした。 >二匹は、人間がいらなくなって捨てたもので暮らしていました。 >人間が捨てた段ボール箱の中で眠り、人間が捨てた食物を食べて生きました。 >でも、いつも欲しいものが捨てられているわけはありません。何せそこは一時間あれば回れる小さな街で、何時間回っても少しも食べ物にありつけない日もありました。 >そんなとき、『何もないね。』ジェームスがそう言うと、 >『じゃあ俺が盗ってくるよ。』と、マットはどこからか魚や鳥肉を盗んできます。 >そんな風にして二匹は暮らしていました。 > >冬のある日の夕方、二匹がいつものように街を歩いていると、人間の親子が楽しそうに木に何かぴかぴかするものをたくさんくくりつけていました。 >気付くと街じゅうがずいぶんとたくさんのぴかぴかしたものでいっぱいになって、おまけにどの家からも美味しそうな食べ物の匂いがしています。 >『あれはなんだろう?』マットはどこかわくわくしながら聞きました。
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