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「茂吉ィ!!」
うねとうねの間、緑の葉で覆われている部分から声が聞こえた。
「大介よ、姿が見えぬぞ」
ガサッ
葉っぱの中から土まみれの男が出てきた。
片手には雑草を持っている。
「よぉ!わりーな、手が離せなかったんじゃァ!」
大介は土まみれの顔に映える白い歯を見せ、豪快に笑った。
「そいで今日は何用で来たんじゃ?」
「おまえの息子に用があってな。」
無表情に茂吉は言う。
「大護にか?」
今まで自分以外の用事で茂吉に家を訪ねられたことがない大介はキョトンとした。
「ああそうだ。」
茂吉は短く答えた。
だが茂吉と付き合いが長い大介はその無愛想さを特に気にする様子もない。
「持ってけ持ってけぇ!あんまりできがいい息子じゃないがなァ!今呼んで来るからまってろな」
そう言って十数メートル先の家に向かって歩き出した。
大介は二、三歩歩くと、
「大護ーーーーーー!!」
大声で息子の名を読んだ。
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