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「幸村は?」
その書状に書いてあるものを確認するためでわなく、理解するために政宗は聞いた。
「逝ったさ。」
佐助の、その至極当たり前だと言うような、思いの籠らない言葉に政宗は書状から佐助へと目を戻した。
主の命とはいえ、敵である政宗にこんな書状を届けなければならないのだ、憤ってもいいはず。
と、そこで政宗は、佐助の目がほんのわずか赤く腫れている事に気ずいた。
憤り、なんてものでわないのだろう。
きっと、深い絶望。
『ー佐助は忍の中の忍よ。』
ふと政宗は、幸村が自らの忍にそう言っていた事を思い出した。
真田幸村。己の好敵手であった男。
とてつもなく純粋で、残酷な男だった。
そんな男だ、自らの忍に何を言うのかは、容易に想像出来た。
現にこの書状にも佐助について、と言うより佐助に向けた言葉が記されていた。この忍にとっては残酷であろう言葉が。
だが政宗は、それを口に出す気は無かった。政宗は幸村ではないのだから。
(幸村、俺はお前ほど純粋じゃぁねぇんだ、…自分の事は自分で決めさせるぞ。)
政宗は、佐助が持ってきた幸村の書状をひらひらと振って見せた。
その動作で政宗は、己と好敵手の思いを現したのだった。
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