000 [渦]

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――渦   そう、渦。   ただの渦じゃない。 運命の渦だ。 あんたは渦が生まれる瞬間を見た事があるか? それこそ、最初はすごい些細なもんなんだ。   だけど、渦はゆっくりと俺たち人間を食らって、大きく膨らんでいく。   大きく膨らんだ渦は、俺たちの周りの友達だったり、家族だったりを巻き込んで、更に大きくなっていく。   そして、気づいた頃には、俺ひとりじゃどうしようも無い位、大きくなって。なり過ぎて、取り返しが付かない事になる。      渦は、容赦をしない。   誰でもかまわず巻き込んでいくんだ。  愛しくて愛しくて仕方なく思う、大切な人達すら……。 ◇ 俺がはじめて“あいつ”と言葉を交わしたは入学式の日。 俺と同じで、手首にきつく時計を巻いたアイツは、何食わぬ顔で俺たちの仲間に入り、そして静かに渦を発して、まずは俺だけを上手にさらっていった。 俺が渦に飲まれた事を知ったときにはもう遅かった。 なぜなら、俺はもう既にそのど真ん中に立たされていたのだから。 どんな時も、始まりは恐ろしく静かなんだ。
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