548人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
――渦
そう、渦。
ただの渦じゃない。
運命の渦だ。
あんたは渦が生まれる瞬間を見た事があるか?
それこそ、最初はすごい些細なもんなんだ。
だけど、渦はゆっくりと俺たち人間を食らって、大きく膨らんでいく。
大きく膨らんだ渦は、俺たちの周りの友達だったり、家族だったりを巻き込んで、更に大きくなっていく。
そして、気づいた頃には、俺ひとりじゃどうしようも無い位、大きくなって。なり過ぎて、取り返しが付かない事になる。
渦は、容赦をしない。
誰でもかまわず巻き込んでいくんだ。
愛しくて愛しくて仕方なく思う、大切な人達すら……。
◇
俺がはじめて“あいつ”と言葉を交わしたは入学式の日。
俺と同じで、手首にきつく時計を巻いたアイツは、何食わぬ顔で俺たちの仲間に入り、そして静かに渦を発して、まずは俺だけを上手にさらっていった。
俺が渦に飲まれた事を知ったときにはもう遅かった。
なぜなら、俺はもう既にそのど真ん中に立たされていたのだから。
どんな時も、始まりは恐ろしく静かなんだ。
最初のコメントを投稿しよう!