001 [カラッポ]

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汚い血が飛び散る。 あの日、俺は欲しいものと恐れていたものを同時に手に入れた。 愛しい人のぬくもり 耳元では叫び声が聞こえる。そんなのは関係無い。 早く食べきれ、貪れ、貪れ 本能からの伝令。素直に応じる俺の身体。 獣のように、激しく、食いちぎって全て俺のものになるように、俺は必死で舐め取り、貪った。 一瞬、たった一瞬だけ脳内に充満した満足感と征服感。 体の一点に集まった情熱はやがてその全体を熱くした。 しかし、その後すぐに訪れたのは、罪悪感と絶望だった。 そいつらはあっという間に俺を包み込み、深く冷たい、“影”の世界へと引きずり込んでいった。 全て終わった頃にはもう遅すぎた。 俺を守っていたものは全て、音を立てて崩れ去ってしまった。 カッターで肉を掻き切る。 不思議と痛みは無い。 思ったより柔らかくて、弾力性が有って。なかなか思うように刃が進まない。 ようやく血管までたどり着いた刃。 嗚呼、汚い血が飛び散る。 それがふき出す様は、まるで蓋の開いたペットボトルを逆さにしたよう。 生暖かい温度はまるで、あの時抱きしめた、彼女の肌の温もりのよう。 そうか、当たり前か。だって。俺と彼女は同じ血が流れているんだ。 汚い血は、俺の手首からどくどくと流れ出ていった。
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