先輩

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佐々木先輩はサバサバしていて元気な感じ。色に例えれば黄色とか橙色だ。 松本先輩はほんわりとした癒し系だと思う…ピンクとか白とか淡い感じだ。 「それで、廣瀬くんは何しにきたの?」 先程までいじっていた携帯をしまいながら言ったのは関口先輩だ。 この先輩は正直苦手な部類に入る。切れ長の目にストレートの黒髪で、とても美人なのだが…口調も眼も厳しそうな印象がある。 「いえ、俺もう行きますから」 そう言った瞬間、関口先輩は目を伏せた。眉間に皺が寄っているのだが…怒らせてしまったのだろうか。 俺が関口先輩に気をとられていると、突如背後から羽交締めにされ、そのままズルズルと教室の外まで引き摺られてしまった。 廊下に出て、漸く腕を解放されて背後の人物を確認すると、其処には部活の先輩である神城先輩が立っていた。 「先輩…何ですか?」 「はぁ~…お前は清くていいなぁ、マジで」 意味がわからない。 言葉に眉をひそめると、先輩は苦笑して俺の腕をとり歩きだした。 俺はギター部に所属していて、神城先輩は其処で組んでるバンドのドラムだ。身長は兄貴並に高いし、容姿に似合わず面倒見がいい。憧れの先輩の一人だ。 部内の他の後輩は、先輩の容姿にびびって近寄ろうともしないし、先輩も興味がないらしく構う事もない。面倒見はいいが、他人にはほとほと興味がないらしく、あまり人と一緒にいるところを見かけない。 そんな先輩と俺が一緒にいることに、周りの皆は不思議に思っている。俺も不思議だ。 最初に話し掛けてきたのは先輩で、先輩が俺に話し掛けた理由も何となく理解している。 俺が「廣瀬晴久」だったからだろう。 ようは、兄貴の弟である俺に、先輩は少なからず興味があったんだと思う。
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