兄弟

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兄貴の「美しいモノ論」には俺が入っていたりする。その理由が「自分に似てるから」とか…終わってると思わないか? 別に似ているのは否定しない。友達にもそっくりだとよく言われる…だけど、俺には悪口にしか聞こえないんだ。「似ている」のは顔のことだと分かってはいるが、まさか自分もナルシストだと思われてるんじゃ…とか思ってしまう。まさに疑心暗鬼。 そして今、今日の夕食を考えている俺の横で、ベッドに寝そべりながら雑誌を読んでいる兄貴……此処、俺の部屋なんだけど。 「なぁ、今日何食いたい?」 「んー?晴は何食いたいの?」 「いや、俺が聞いてるんだけど」 駄目だこの男。 家事は殆ど俺がやっている…と言うのも、母が化粧品店の店長をしていて多忙なためである。因みに父は普通に会社員。 だから今日も今日とて献立を考えてるっていうのに、まったく頼れないこの男。 質問を返してくるなよ。 「あーもう…適当に作るからいい」 ミニテーブルに広げられた料理本を片付けて部屋を出ようと腰をあげたら、不意に服の裾を引っ張られた。 「御免御免、そんな怒るなよー」 「コタローが阿呆だからだろ。俺は宿題もしなきゃなんないんだよ」 俺だって十分多忙なんだ。部活やって飯作って宿題して…つーか部活してない兄貴がやるべきなんだよ! 俺が苛々していることに気が付いた兄貴は、読んでいた雑誌を閉じて立ち上がる。 「んじゃ、晴の為に俺が宿題か飯作り…どっちかしてやるよ」 「マジで?」 兄貴からの意外な言葉に素で驚いた。 本来なら宿題の方をお願いしたいのだが、兄貴には今後の(俺の)為に家事をできるだけ覚えてもらいたい。 「じゃあ飯頼んだ。なんかあったら呼んでくれればいいから」 「ん、わかった」 そして兄貴は部屋を出ていった。
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