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宿題をやりつつも暫くは兄貴の様子が気になり、そっと耳を澄ましてキッチンの様子を窺う…。しかし、どうやら順調らしく妙な音はしない。それに安堵し、俺は宿題に取り掛かった。
宿題を終え明日の準備をしていたとき、一階から夕食ができたことを知らせる声が聞こえた。それを聞いて部屋の扉を開けたとき、嫌な匂いが鼻を刺激した。
別に焦げ臭いとか、料理が失敗したことを悟らせる匂いではない…否、一般的にはこの匂いがした時点、失敗の部類に入るのかもしれない。
あまり乗り気ではないが渋々ながら一階に降りてみると、まだ両親は帰宅していないらしく、兄貴が椅子に座って手招きをしている。そして上機嫌な兄貴の前には、匂いの根源である料理が置かれていた。
「コタロー…それは?」
眉間に縦皺を刻んでいる俺に、兄貴は満面の笑みで答えた。
「ハバネロ炒飯と鷹の爪スープと明太子餃子」
「………」
何も言えなかった。
中華で揃えたとか言っているこの男に料理を任せた俺が悪いんだ。
何故主食が断トツの辛さなのかとか、せめて汁物くらい大目に見ろとか、お前よく餃子作れたなとか、言いたいことは色々とある…だが、悪いのは俺なのだから言えない。なんと歯痒いことか。
「ほら、冷めるぞ?」
「……ぅん…」
意気揚揚とスプーンを手に持つ兄貴に促され、俺も椅子に座るが……これは地獄の食卓か?
いただきますと手を合わせ、スプーンを手に持ったものの中々動かせない。そんな俺とは対照的に炒飯を食べているこいつに若干殺意を覚えながら、とりあえず炒飯を一口食べてみる。
「───ッ」
辛いというか本当に痛い!
明日舌が使い物にならなくなりそうだ…。
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