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耳をすますと父親の声が聞こえてきた。また自分の進路の話でもしているのだろうと、凛はため息をつく。成績がガタ落ちし、推薦枠からも外れた。
中1の時は、学校でも上位25位から落ちたことはなかったのだが、中3になると周りも頑張りだした為、中間以下の成績になってしまった。両親はそれほど口には出さないが、やはり姉の美咲の高校レベルよりも上を望んでいるはずだ。頭のレベルも、認知度も高い、仲良くグループがすでに入学を決めている高校になんとか合格したいものだ。それも、出来るだけ楽に――。
とりあえず勉強机に座り、数学の参考書を開く。しかし、目の前にある鏡を見ると、化粧ポーチから毛抜きを取り出した。眉毛の形がどうも気に入らないのだ。
瞼に近い毛を抜く度に涙腺から勝手に涙がでてくる。それをティッシュで拭い、余分な長さの毛を小さなハサミでカットする。少し細めで形の整った眉ができた。
切りすぎたかも――。
凛は口をへの字にして眉を寄せた。毛の全体が短くなり、眉自体が薄くなってしまったのだ。眉を指でなぞった後、化粧ポーチからパウダーとペンシルを取り出し、眉を丁寧に書いた。眉だけが浮いてしまい、あぶらとり紙で鼻をおさえてファンデーションを塗る。どうせなら、とアイラインも入れてみた。ファッション雑誌を開いてお気に入りのメイクを真似てみる。マスカラのダマが、参考書にポロポロと落ちた。
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