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……なにこれ。幽体離脱って身体から魂だけが抜ける、アレだよね。なんか怖いな。
不意に背後が気になり、凛はゆっくりと顔を後ろに向けた。すると本の隙間からこちらを覗き見る人影なんてものはなく、怖い妄想だけが頭の中にイメージされた。凛は何でもすぐに影響を受けやすい、単純な感性の持ち主なのだ。
チョー鳥肌立つんですけどー。幽体離脱か。もし本当にそんな事ができたら、試験問題とか余裕で前以て見られるじゃん。
凛は丸い目をキラキラと輝かせると、本を抱くようにし、今にも走りだしそうな勢いで机に戻る。そして広げられていた教科書やノート、筆記用具をカバンにしまった。財布から図書館の貸し出しカードを出すと、カウンターに向かった。
「これっ、貸してください」
凛は表紙を隠すようにしてカウンターに置いた。幽体離脱の本を借りるのが少し恥ずかしかった。なかなか厚みのある本だ。定価は書かれていなかったが、値段は高いような気がする。お小遣いも少ないし、参考書以外は親も買ってはくれないだろう。司書が本とカードを受け取ると、耳まで熱くなってきた。
「あれ?おかしいわね……」
司書のお姉さんが言った。凛は俯いていた顔を少し上げると、上目遣いで様子を伺った。
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