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誰もが動く間もなかった。ナイフの刃は正確に由佳の胸を貫いた。
由佳は目を見開きゆっくりと崩れ落ちる。
『由佳さん‼』
健司と美優が倒れた由佳に駆け寄る。
女の腕を掴んでいた竜司も一瞬由佳に視線を向けた。
女はそのスキを逃さなかった。竜司の腕を振り払うとリビングの窓ガラスを破って身を踊らせた。
「しまった!」
竜司は慌てて窓から外を覗き込むが…
「チッ!」
女はエンジンをかけたまま停車していたワゴン車に飛び乗る。と同時にワゴン車は猛スピードで発進し消えた。
「由佳さん!由佳さん!」
美優は泣きじゃくりながら由佳にすがりついた。
「ここはヤバい。洗面所の火がデカくなってきやがった。逃げるぞ」
竜司はドアのなくなった玄関を顎でしゃくった。
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