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「リュウ!」
「武…」
病室の前の椅子でうなだれていた竜司は顔を上げた。
「容態は?」
武はICU(集中治療室)のガラス越しに意識を失い酸素吸入器を付けられている由佳を見た。
「助かるか五分五分らしいです」
健司は頭を振った。
「由佳ちゃん。死んじゃやだよぉ」
美優は涙と鼻水で顔をクシャクシャにしていた。
「俺のせいだ」
竜司は拳を固めて自分の膝を叩いた。
「すぐにナイフを叩き落とすべきだったのに…」
「そんな…竜司さんは悪くないです。元はと言えば僕の予知が遅かったんです。それに、もしも竜司さんがいなかったら僕らも全員死んでました」
健司が慌てて否定する。
「そうだ。リュウ、お前はよくやったよ。まさか犯人が持っていたナイフがスペツナズナイフ(刃が発射されるナイフ)だったなんて、あの時点では…」
「うるせぇ!俺の責任だ」
「……そうだね。今回はリュウの責任だ」
その場の空気が凍りついた。
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