二章 初日、目覚めた後

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梓さんはようやく満面の笑みを見せる。そして僕の袖を掴んで引っ張る。 「ちょっと寄り道」 「え?あ…」 どうやら問答無用らしい。かなり強制的に僕は連れて行かれた。 でもそんなたまに強引なところも素敵だ。 僕は彼女に引っ張られながらどこかへ連れて行かれる。 「ふふん。ここはこの町の自慢の場所」 「ほぇ~…」 連れてこられた場所は桜の並木道。両脇に一列に並んだ桜の木は、外灯に照らされて淡く光る。 季節は春。まだ肌寒い時期。桜は儚く散っていた。 その花びらは風に揺られてひらひらと浮かび上がる。眼前には桜吹雪が舞っていた。 「素敵な場所ですね。桜をこんな風に落ち着いて見るなんてあんまりなかったですから」 今の僕、カッコいいかも… 「田舎だもん。都会とは違って、見える景色も違うよ。こんなに桜が見えるところなんて滅多にないでしょ?」
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