二章 初日、目覚めた後

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僕の生まれ育った場所はかなりの都会。住宅街を越えれば高層ビルが建ち並ぶコンクリートジャングル。 空気はこことは比較にならないほど汚れていた。 もちろんこんなに桜が咲いている場所なんて生まれて初めて…いや…二度目くらいかも…。 僕は桜を見上げて目を閉じた。 ―――「綺麗…こんな場所初めて…」 「僕だって初めてだ。見とれちゃうね…」 「私に?」 「見とれる顔かよ」 「ううっ…今のは効いたわ…」 ―――瞼の裏に映ったいつかの残像。脳の片隅に焼き付けられた断片。 あの日、あの場所も、溢れてしまいそうなほど桜が花を咲かせていた。 再び目を開ければそこにはかつてのそれとよく似た光景が見える。 「どうしたの?急に静かになって。あ、もしかしてこの桜に酔いしれてたの?」 「え?あぁ…UFOが飛んでいたんですよ」
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