十四章 夕刻、欠けてゆく夢

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「見える範囲に人の姿はありません」 「行くわよ。ついてきて」 僕は一美さんの後を足音すらもたてずに進む。 夕日が強く僕たちを照らしていた。 僕らは今小春荘へ向かっている。このままじゃみんなは危険にさらされる。 それは目に見えていることだった。 みんなと過ごした時間はまだ短い。だけどみんなとの絆は既に強く繋がれていた。 この絆を千切る事なんて、当然僕には出来なかったから。一美さんから見ても、長い人生の内のたった一年過ごした仲間だけど、きっとその絆の繋がりは感じているはずだ。 じゃなきゃみんなを助けることに同意なんてしないはずだ。 再び町に入った僕たち二人。 それは一美さんが言った通り自殺行為に等しい。 町はすべて敵。 僕たちの目的地は町の中心から西に百数十メートルの場所。 僕たちのいる場所は奉龍山の麓。それも一番西よりの白涙川のすぐ横である。
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