十四章 夕刻、欠けてゆく夢

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以前一美さんに案内された一カ所、柵のない崖下に僕たちはいた。 白涙川に沿って下ることで人目につかずにここまで来れた。 僕たち二人は岩肌の荒いなだらかなそれを上る。 「きついですね」 「弱音を吐くのは早いわよ」 上ったそこから町の姿を伺う。 やはり人の姿は見当たらない。 「今ですね!早く終わらせなきゃ」 「焦らないで。いい?ここから先は戦場…何があっても後戻り出来ないのよ。誰かが命を落としても不思議じゃないの」 僕は唾を飲む。 そう、ここから先無事に帰ってこれる保証なんてない。 「私は不死。ある程度ならみんなを守れるかもしれない。でも絶対に死ねないわけでもないの」 「え?」 「首を切り落とされれば、いくら私でも生き残れないわ」 「一美さん…」 「かつてはやっぱり私と同じような不老不死を願った人たちはいた。でもその人達はすべて殺された。首を切り落とされてね」
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