十四章 夕刻、欠けてゆく夢

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それを聞いて妙な不安を感じずにはいられなかった。 「さぁ、もう話してる時間はないわ。奴らはきっとお祭りに乗じて襲いかかってくる。タイムリミットは日が沈む時よ!」 ―――美月達五人は支度を整え階段を降りてゆく。 「あら?みんなしてお出かけ?」 声をかけられる。一階の居間から顔を見せたのは小春荘の女将すみれだ。 「あ、はい、ちょっと…」 梓は反応するが、美月の言葉を聞いた手前、少し動揺を隠せないでいた。 「どこへ行くの?」 笑顔を崩さないすみれに、五人は恐怖を感じずにはいられなかった。 「大した用事じゃないです。すぐ戻ると思いますので」 京介は敢えてそう言った。戻ると思うと言うのは、遠回しに戻らないかもしれないと言う事だからである。 「今日は私がごちそうを用意しますからすぐ帰ってきてくださいね」 すみれはまるでどこにも行かせないかのようにそう告げた。
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