十四章 夕刻、欠けてゆく夢

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―――「隠れて!」 声を殺しながらも叫ぶ一美さんの声に、僕は俊敏に反応して物陰に身を潜める。 道の先に数人の人の影、僕たちは二人その姿を見つめる。 キョロキョロと周りを気にかける様子から、何かを探しているのだと予想がつく。 いや、何かではなく誰か…、言うまでもなく僕たちのことだろう。 「ねぇ一美さん…あいつらの顔…」 ただ、誰が見てもその姿は異様だった。 「あれは赤月のお祭りで使われるお面よ。白火を讃えているの」 数人の人間はどれも全く同じお面をつけていた。 白く塗りつぶされた、穴があいただけのぶっきらぼうなお面。 「さっきの話で言ってたやつか…。白火を讃えているお祭り、だから白塗りね。わかりやすぅ」 「そんなところよ。この道は使えないみたいね、少し大回りしていきましょう」 町の中には、予想に反してあまり人と出会うことがなかった。
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