十四章 夕刻、欠けてゆく夢

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そんな五人に声をかける駅員の一人。 いや、おそらく駅員ではないだろう町の人間だ。 「この駅はただ今停止中です」 「何かあったの!?」 「多少トラブルがありまして、電車は来ませんよ」 そう言った男は不敵に微笑む。 だが、そんな顔を見せつけられても京介は怯まなかった。 「トラブルとはなんですか?具体的にお願いします」 するともう一人の駅員らしき男が前に立ちはだかった。 「お前らに言う義務はねぇ。いいからさっさと帰んな。お前らはあそこに住んでる奴らだろ?」 そう言って男は小春荘を指さした。 「ですが、どうしてもはずせない用があるんですよ。だから後二分後に来るはずの列車に乗らなければなりません」 「二分後に列車は通らねえ!ガタガタぬかす前に失せろ!」 怒声が響き渡る。 数人はその声に気圧されたが、京介は微動だにしない。 京介は今の良くない状況を誰よりも感じ取っていたからだ。
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